うかつに「検討する」と言えない議会 結果報告の義務付けで行政サイドが及び腰 島根県江津市
https://news.yahoo.co.jp/articles/b67ba36dfb048d27638ab674739097ec7d5c1a65

議会答弁の決まり文句としておなじみの「検討する」という文言が、島根県江津市議会で大幅に減っている。市執行部が「検討する」と答弁した場合、結果を半年後に報告することを義務付ける制度が2021年3月議会から試行され、執行部が「検討」を安易に使わなくなったため。形式的答弁だけして実際に対応しないことを防ぐ狙いの制度だったが、逆に「検討」すら引き出せなくなり、裏目に出ている。

 制度試行は、同様の取り組みをしている長野県飯綱町を視察した議会が市に提案して始まった。背景には議員のなり手不足など関心低下への危機感があり、議会活動や市政の現状を分かりやすく市民に伝えることも狙った。一般質問に対する答弁が対象で、議会側が指定した案件に限り、市側が検討結果の報告をする。

 試行の成果を確認するため、中国新聞が21年3月以降7回の定例会の一般質問と、試行以前の7回の一般質問の議事録から、答弁中の「検討している」「検討したい」などを抽出し、比較した。その結果、試行以前は計169件だった「検討」が、21年3月以降は3割減の計124件に減っていた。また、制度を始めた21年3月議会で23件だった「検討」は、次の6月議会では11件と半減していた。

 議会側の回答指定も、初回の21年3月議会では「街灯設置の検討」など4件、6月議会で1件、12月議会で4件あって以降、22年に入ってからはゼロが続いている。

 減少について、ある市幹部は「検討すると言ってしまったら実現しないといけなくなる。これまでは使いやすい文言だったが、使いにくくなった」と打ち明ける。別の幹部も「試行の開始以降、意図的に避けるようにしている」と明かす。

 対して、藤間義明議長は「後ろ向きな理由で減るのは、正直意外だ」と受け止める。今のところ具体的な対策は考えていないとし、「検討の結果、仮に実現できなかったとしても仕方がないこと。行政について市民が分かりやすいように議論し、活発な議会にしたい」と市側に投げかける。

 議会側の回答指定が減った背景については、5月の市議選で議員6人が入れ替わり、制度が十分に周知されていなかったとしている。