この経緯を振り返ってみよう。

異次元金融緩和政策は、量的緩和政策として出発した。つまり、国債購入額の増加が、その手段だった。具体的には、長期国債の購入額を年間50兆円程度にすることとされ、2014年には、これが80兆円に増額された。実際の購入額も増加し、2015年には80兆円を超えた。

この結果、日銀の国債保有額は、2012年12月末には預金取扱機関の約3割でしかなかったが、2015年9月末には預金取扱機関のそれを超えた。

そして、日銀購入額も2016年1月末にピークとなった。その後、日銀はマイナス金利政策に転換し、国債購入額は減っていった。

2020年9月末では、対前年増加額は約7兆円。これは、ピークのわずか7%にすぎない。「量的緩和政策」からは、いつの間にか脱却していたのだ。

それでも、保有額は増加し続け、2020年9月末は、497兆円となった。これは、国債残高のほぼ半分だ。

他方、預金取扱機関の国債保有額は、128兆円しかない。

これは2020年度の新規国債発行額112.6兆円(第3次補正後)とあまり変わらない額だ。

金融機関は担保などのために一定額の国債を保有している必要があるから、日銀が購入額を増やすといっても、限度がある。

日銀は、最も重要な経済変数である長期金利をコントロールする手段を失っていると考えざるをえない。