富野監督の「隠れた」トラウマエピソード3選 「ザンボット3」「イデオン」だけじゃない!

『機動戦士ガンダム』などの作品で知られる富野由悠季監督。富野監督には「皆殺しの富野」という異名があります。

 代表的な作品として、主人公のファミリーが次々と特攻で死んでいく『無敵超人ザンボット3』(77年)、
敵も味方も全滅エンドを迎える『伝説巨神イデオン』(80年)と『聖戦士ダンバイン』(83年)、
登場人物のバリエーションに富んだ死に際を絶え間なく見せ続けた『機動戦士Vガンダム』(93年)などがあります。

 これら以外にも、富野監督は視聴者の子供たちのトラウマになるような作品をいくつも手がけてきました。
今回はアニメがまだ「テレビまんが」と言われていたような時代に、富野監督が携わったトラウマエピソードを3本振り返ってみましょう。

『ラ・セーヌの星』(75年)第39話(最終回)「さらばパリ」

 フランス革命の頃のパリを舞台に、美少女シモーヌが仮面の剣士「ラ・セーヌの星」となって、悪事を重ねる貴族や治安警察などと戦う物語です。
富野監督は終盤の第27話から第39話までの監督を務めました。総監督は大隅正秋さんです。

 最終回ではフランス革命が起こり、シモーヌの異母姉の王妃マリー・アントワネットがギロチンにかけられてしまいます。
ラ・セーヌの星はこれまで民衆のために戦ってきましたが、最終回はマリーの幼い子供たちを守るため、暴走する民衆相手に戦いました。

 富野監督はマリーがギロチンに首を乗せ、涙を流す場面までしっかりと映します。
ギロチンが落ちると民衆は大喝采! シモーヌは母が処刑されたことを知らない子供たちを連れて、いずこへと旅立ちました。

 後味の悪すぎる最終回に呆然とした視聴者の少女たちも多かったでしょう。
最終回の善悪逆転劇は『海のトリトン』(72年)や後の『ザンボット3』(77年)を思い起こさせます。

 富野監督はなぜここまで容赦のないトラウマ描写を繰り返したのでしょう。当時のタツノコプロのハードな作風も関係したでしょうが、
やはり「子供には絶対に嘘はつけない。子供だましの作品を、子供は見放します。見放されないために、作者は全身全霊をかけろ」という富野監督の哲学が反映されていると思います。
「子供相手だからハッピーエンドにすべき」「子供相手だからこの程度の描写でいい」とは一切考えないのが富野監督なのです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6fd20f7c4434dcf10df7a3cb7b752c8cad95eeb8