3年前、福島県三春町で故意にひき逃げして2人を殺害した住所不定・無職の盛藤吉高被告(53)の控訴審判決で、仙台高裁は一審の死刑判決を破棄し、無期懲役を言い渡しました。

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■裁判の争点

この控訴審はおととし11月から始まりました。

盛藤被告は「殺すつもりはなかった」と殺意を否定し「被害者の方はトラックを避けることもできたのではないか」と被告人質問で答える場面もありました。

そして弁護側も「盛藤被告に積極的な殺意はなかった」として、傷害致死罪の適用を求め、量刑の不当を主張しました。

一方で、検察側は盛藤被告はトラックを時速60キロから70キロの速さでガードレールに寄せて運転し、被害者に衝突させたことから「明確な殺意」があったと指摘。控訴棄却を求めていました。

■一審破棄の要因は「計画性と悪質さ」

今回の判決では一審の死刑判決が破棄される形となりましたが、その要因はどこにあったと考えられるのか。専門家が指摘したのは「計画性と悪質さ」です。

福島大学(刑事法学専門)高橋有紀准教授「被害者が2人という事件は、死刑になる場合も無期懲役になる場合もどちらもある」

こう話すのは、刑法など刑事法学を専門とする福島大学の高橋有紀准教授です。

今回の判決の1つのポイントとして「犯行の計画性」を挙げました。

高橋准教授「(仙台高裁は)殺意がなかったとまでは言わない一方で、強固な殺意に基づいた計画的な犯行とは言えないと判断されたことが大きかったと思います」

また、今回の犯行は「無差別殺人」とは異なると高裁は判断したと高橋准教授は指摘します。

高橋准教授「多くの人が想像するような、無差別殺人の多数の人を街頭で切りつけるような事案と今回トラックで2人の方をはねて死なせてしまう対応は悪質さという観点で異なるという判断をしたのだと理解している」

高橋准教授によりますと、裁判員裁判で下された死刑判決が二審で覆ったのは、東北地方では初めてで、裁判員裁判の判決を尊重すべきという声もあります。

この点について高橋准教授は、一審の判決を尊重すべきという意見も一理あるとした一方で「高裁で職業裁判官が再び慎重に判断する今の仕組みは、一審で死刑判決を下した裁判員の精神的な負担を軽減している側面もある」と話していました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/912fee2d020d046dc9602a763d8b941fb02aa2f8