「お手本にしたい政治家」
親子という濃密な人間関係とは全く違う、親族としての付き合いなのに「安倍元首相の世襲」であるかのような振る舞いは、いったい全体どういうことなのだろう。本人が悪くないとすれば、そうさせた周囲が悪いのか。世襲というなら、やはり父であり、自身も秘書官をつとめあげた岸信夫元防衛相について果敢に論じるべきだろう。
世の中が、世襲候補に求めるものがあるのだとすれば、世襲であるからこそ引き継げる「政治、外交、交渉事における不文律」が自分にはある、ということである。
しかし、関係希薄な安倍元首相の世襲っぽいだけの候補には、その利点はない。手記を読む限り、安倍元首相の「いちファン」に限りなく近い存在でしかない。
世論には、世襲に対する批判もあれば、世襲に対する安心感もあるのだから、世襲であることをポジティブに主張したいのなら、「親父を語る」のが正解だ。
信千世氏は「お手本にしたい政治家」として、麻生太郎氏をあげているが、その根拠が極めて薄いのも気になった。詳細はHanada誌に譲るが、簡単に言うと、父の信夫氏が政治家引退の挨拶をしに、信千世氏とともに麻生氏の衆議院議員事務所へ訪れた際、事務所の廊下までわざわざ見送りに来たこと(ただし、エレベーターホールまでは来てないようだ)をその根拠としてあげている。
麻生氏のそんなことをお手本にするとは、まさしく、人々の歓心を買いたいだけの人間にしか見えない。信千世氏はとにかく人に好かれたいようである。