政府、法改正議論時にAIの著作権リスク説明せず…先進国で最も緩い法規制の枠組みに
5/16(火) 5:00配信

 AI(人工知能)が文章や画像などの著作物をほぼ無条件で「学習」できる著作権法の規定を巡り、政府が法改正当時、AIによる著作権侵害の可能性を権利者側に十分説明していなかったことがわかった。政府の審議会では、現在の生成AIのような高性能技術の開発を前提に議論されていたが、権利者側がリスクの存在を把握できないまま、先進諸国で最も緩い法規制の枠組みが作られていた形だ。

 2018年に成立した改正著作権法は、30条の4でAIが文章や画像を学習する際、営利・非営利を問わず著作物を使用できると定める。「著作権者の利益を不当に害する場合」は使用できないとしているが、文化庁は該当するケースを限定的にしか示していない。高性能の対話型AI「チャットGPT」など生成AIが急速に普及する中、権利者側から著作権侵害の恐れを指摘する声が強まり、波紋を広げている。

 法改正にあたっては、AIやビッグデータなど「第4次産業革命」を念頭に、大学教授や弁護士らで構成する文化審議会著作権分科会のワーキングチーム(WT)が15年10月から議論を開始。産業界からの意見を踏まえ、高性能AIを駆使して大量のデータを収集・蓄積、解析する「サイバーフィジカルシステム(CPS)」の開発を前提として検討が進められた。

 WTは16年6、8月、権利者側へのヒアリングを実施した。事前に権利者団体側へ提示した説明文書では、あらゆる著作物がCPSのサービスなどに利用される可能性には触れていたものの、権利侵害の恐れは明示しなかった。文化庁の担当者は「CPSは、現在の生成AIを含む概念だった」と振り返るが、当時は生成AIの出現を想定した説明は行われなかった。

※略※

 AIの学習に対する著作権法の規制が緩く、「機械学習パラダイス」とも呼ばれる日本。09年以降、数度に及ぶ法改正の経過からは、国内のIT技術の興隆を優先させ、著作権の保護が弱められていった実態が浮かび上がる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ab837c6efb5cdf97f61ea204c0f2c29824ee70bc