JR外房線の永田駅(千葉県大網白里市)で、トイレが2月上旬から閉鎖され、鉄道の利用客や地域住民が困惑している。経費削減のためだとしてJR側がトイレの譲渡を市に申し出たが、市は維持管理にかかる財政負担に難色を示して拒否。双方は協議を続けているが、5月15日の話し合いは平行線をたどった。住民らは双方に、再開に向けた対応を求めている。(戸田光法)

 問題の始まりは、昨年4月のことだった。市はJR東日本千葉支社から、永田駅構内のトイレや隣接地の譲渡を提案された。JR側は利用者の減少やコスト削減を理由に挙げたという。

 JR千葉支社によると、永田駅の2021年度の乗車数は1日平均775人。トイレの利用者は1日平均10人で推移してきたが、コロナ禍で1日2〜3人に減っていた。日中に限り、駅員は1人いる。

 市は、トイレを譲渡された場合の水道代など維持管理費を検討。「鉄道利用者が使用する駅構内の施設を、市民から幅広く集めた税金で維持するのは筋が違う」などと判断し、昨年7月に提案を拒否した。これを受けてJR側は、今年2月5日からトイレを閉鎖した。

 閉鎖に伴い、JR側は列車内のトイレを使うよう促している。ただ、都内への通勤に永田駅を利用する50歳代の男性会社員は「京葉線直通の電車にはトイレがない。駅から自宅まで徒歩で15分かかるので、駅のトイレは助かっていた」と話す。

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 影響は駅周辺の住民にも広がっている。近くに公共施設がなく、鉄道を利用しない住民もトイレを使っていたからだ。

 住民の間では、トイレの維持管理を市に「丸投げ」したと受け止め、JR側に見直しを求める声があがっている。市に対しても、JR側に協力して財政負担などを検討するよう求める意見がある。

 住民らは「存続させる会」を結成し、これまでに約150人分の署名を集めた。同会事務局の新倉雅樹さん(60)は「駅の周りにはコンビニもない。鉄道の利用者だけではなく、地域住民の利便性も考えてほしい」と訴える。https://news.infoseek.co.jp/article/20230519_yol_oyt1t50130/?tpgnr=poli-soci