坂本さんのこの十数年を聞き書きの形でまとめた文芸誌「新潮」の連載をもとにした同書。聞き手を務めた編集者・ジャーナリストの鈴木正文さん(74)は「坂本さんがやがて訪れるこの地上での死を予期して始めたことだと思う」と語る。

死後、遺族から日記の一部を託された鈴木さんは、後書きにその日記を紹介、遺族に聞いた最期の日々も盛り込んだ。

坂本さんは3月19日に自宅で食事をして就寝後、真夜中に気胸で病院に救急搬送された。肺の状態は悪く、緩和ケアに移ったのは25日のこと。坂本さんは医師と握手して礼を述べ「もうここまでにしていただきたいので、お願いします」と語ったという。

その後、事前に決めた葬儀で流す曲目を選び直し、中国での展覧会の打ち合わせをオンラインでこなし、音楽監督を務める東北ユースオーケストラの公演も病床で見守った。ベッドの正面に、1月発表のアルバム「12」のジャケット用に現代美術家の李禹煥さんが描き下ろした絵を飾らせたのは3月27日。そして、28日未明に亡くなった。


坂本龍一さん最期の日々「もうここまでに」 日記含め刊行
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF190P30Z10C23A6000000/