箱根名物・黒たまごはなぜ黒い? 中学生の疑問が覆した「定説」

箱根温泉(神奈川県箱根町)の源泉地・大涌谷の名物「黒たまご」。地熱と火山ガスの化学反応を利用し調理される=木村凜太朗さん提供

箱根の景勝地・大涌谷(神奈川県箱根町)には、湧き上がる温泉でゆでて蒸した名物「黒たまご」がある。卵の殻はなぜ黒くなるのか。
長年にわたり信じられていた「定説」を、一人の中学生の疑問と熱意が覆した。

町立郷土資料館によると、黒たまごの詳しい歴史は不明だが、1956年発行の岩波写真文庫(岩波書店)に、すでに当時名物だったとの記載がある。

黒たまごを製造販売する奥箱根観光(同町)によると、大涌谷の標高約1400メートルにある約80度の温泉池「たまご池」で、生卵を約1時間ゆで、
湧き上がる約100度の蒸気で15分蒸すと、殻が真っ黒な黒たまごができあがる。大涌谷には複数の温泉池があるが、ゆでると黒くなるのは、たまご池だけだという。

大涌谷の蒸気には、二酸化硫黄や硫化水素などの火山性ガスが含まれている。黒い成分は、温泉池の鉄分とガスが反応した硫化鉄だという「定説」がある。
奥箱根観光が運営する「大涌谷くろたまご館」のホームページでも、そうした説明をしている。

これに関心を持ったのが、広尾学園高(東京都港区)1年の木村凜太朗さん(15)だ。

木村さんは同中1年だった2020年、くろたまご館に併設された資料館を家族旅行で訪ね、「黒たまごの黒さの理由はわかっていない」という表記があるのを目にした。

さらに、アルコール消毒した客の手に、卵の黒い色素が移ることに気づき、定説に疑問を抱いた。

「硫化鉄は安定した物質なので、こうはならないはず」

そこで、…この記事は有料記事です。 残り1484文字(全文2106文字)ご登録から1カ月間は99円 今すぐ登録して続きを読む 登録済の方はこちらからログイン
https://mainichi.jp/articles/20230630/k00/00m/040/260000c