[トロント 10日 ロイター] - 10年ぶりの長編アニメ映画「君たちはどう生きるか」に挑んだ宮崎駿監督(82)が引き続き次回作の制作に意欲を見せていると、スタジオジブリの幹部が語った。

7日から開催されているトロント国際映画祭オープニングガラでの国際プレミア上映後、スタジオジブリの執行役員(広報担当)の西岡純一氏はロイターとのインタビューに応じ、作品を完成させるたびに「引退」を口にしてきた宮崎監督が「今回は言っていない」と述べた。新たな作品については「まだ具体的に動き出していないが、意欲を示している」と明らかにした。今も毎日スタジオに姿を見せているという。

人工知能(AI)が今後、映画制作に大きく影響する可能性があるものの、宮崎監督の創作力に勝ることはないと西岡氏。「AIは優等生で、80点は取れる」としつつも、宮崎監督なら「120点、150点のものを生み出すことができる」と強調。「AIが進歩しても不安には思っていない。ツールとして使えばいい」という見方を示した。

「君たちはどう生きるか」の制作では、宮崎監督の年齢や作品を完成できるかどうかといった不安もあり、公開日を設定せず、出資者も募らなかったと西岡氏は明かす。

宣伝や予告編、声優の紹介など一切ない「ゼロ宣伝」で封切りとなったことも話題を呼んだ。

映画が予告紹介されなかった時代のように、「何の情報もなく映画を観るわくわくする体験」を提供したかったと西岡氏。異例の宣伝なし戦略に手応えを感じているとも話す。日本では7月の公開以降、観客動員数は500万人を超えている。興行通信社のデータによると、今月3日時点の興行収入は77億円を突破した。

一度表明した引退を撤回し、制作に乗り出した今回の作品は、第2次世界大戦中に母親を亡くした少年が不思議な世界での冒険を通じ成長する姿を描く。西岡氏は、宮崎監督が「自分の内面を見つめ、子どものころの葛藤や母への思いをストレートに見せた作品」と説明。「自分はこうして生きてきた、こうすべきだったと描くことで、激動する今の時代に『君たちはどう生きるか』と問いかけることが最大のメッセージ」と述べた。

トロント映画祭では、邦画もしくはアニメとして同映画祭史上初のオープニング作品に選ばれた。宮崎監督は現地入りしなかったが、宮崎監督の大ファンだという著名映画監督ギレルモ・デル・トロ氏がサプライズ登場し、会場をわかせた。

プレミア上映を観た観客からは「素晴らしい。期待を大きく超える内容だった」「詩的」「言葉で表現できない」といった感想が聞かれた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c61ac3603f8b4d74eddab2f5454f4f48cb7b128d