続々倒産…ラーメン店に立ちはだかる「1000円の壁」 物価が高騰しても値上げできない「恐怖心」の正体

ラーメン店の店じまいが増えている。材料費や人件費が高騰しているが、飲食の他業界に比べ、価格転嫁が難しいためという。俗に言う「千円の壁」。長く国民食として親しまれてきただけに、この壁を越えると客足が途絶えるという不文律だ。ただ、上質な食材を用いるラーメン店も数多く存在し、世界的な物価高はしばらく収束を見込めそうもない。壁は打破されるのか。

◆「これ以上になると、高いと言われてしまう」
 「素材の味に妥協せず、できる限りの値段でやってきた。でも、もう…」
 東京都板橋区の「無添加らぁ麺奏かなで」の男性店主(40)はため息をつく。店頭には「今月26日で閉店します」の貼り紙。店名の通り、スープの鶏や麺の小麦、卵やしょうゆに至るまで、オーガニックで通してきた。そんなラーメンは1杯900円。「これ以上になると、高いと言われてしまうので」

東京商工リサーチの調査によると、今年8月までに倒産したラーメン店が全国で28件に上り、前年同期比で3.5倍と激増。このペースで推移すれば、過去15年間で最多の年間42件に達する可能性もある。
資本金1000万円未満、従業員5人未満がともに9割で、零細規模の店が目立っている。業界関係者は「個人商店の閉店、都市部での複数店舗の縮小を含めれば、店じまいの件数はもっと多い。食材高騰のほか、アルバイトの人手不足も深刻。コロナ禍の営業自粛が尾を引いている」と明かす。

ラーメンの原価率が一般的に30~35%とされる中、先の男性の店では4割弱に達していた。野菜や味の核心となる調味料が高騰し、水道光熱費の負担も増していたが、「消費者が納得しない」といい、値上げの選択肢をとらずに閉店を決めた。
「矛盾するが、厳選した品を適正価格で食べてほしい思いと同時に、いろんなお客さんに来てもらいたい思いも強かった。大衆食であることがラーメンの魅力なので」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/290912