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GISTについて〜胃のGISTを中心に〜
1.GISTとは
GIST(ジストと発音)という病気についてご存知でしょうか。最近著名人でGISTが原因で亡くなられた方の報道がありましたが、その際にGISTという病名を耳にした方もいらっしゃるのではないかと思います。

GISTは比較的まれな病気であり、多少複雑な疾患概念であるため一般的には少し理解しにくい病気ではないかと思われますが、基本的にはがんと同様の悪性腫瘍に分類されるため、注意が必要な疾患です。

GISTとはGastro-intestinal stromal tumorの略(下線部を順番に並べたもの)で、日本語では消化管間質腫瘍といいます。消化管は口腔から食道・胃・小腸・大腸を経て肛門まで連続する一本の管であり、この管を構成する壁は基本的に内側から粘膜・粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・漿膜(食道と直腸の一部では外膜)という構成でできています。GISTと同じ悪性腫瘍であるがんは粘膜から発生しますが、GISTは粘膜より下の間質と呼ばれる部分(主に固有筋層)から発生することががんと異なります
GISTはその間質(主に固有筋層)中の消化管の運動に関与する細胞から発生した腫瘍で、細胞の増殖に関わるKITという異常な蛋白質が産生されることにより生じます。一般的にはKITを腫瘍の組織から検出することでGISTと診断され、GISTの95%以上に検出されますが、最近はこのKIT蛋白以外にも様々な物質(CD34やDOG1)がGISTの診断に用いられています。

GISTの発生臓器としては胃が最も多く50〜70%、小腸が20〜30%、大腸が10%で食道はまれです。

2.腫瘍の良性・悪性とGISTの悪性度について
腫瘍という言葉は異常な細胞の増殖を示していますが、悪性と良性の違いは、悪性は増殖する能力が高く周囲や血管・リンパ管などに浸潤し他の臓器などに転移をきたす能力を持つ腫瘍を、良性はある程度以上は大きくならずに局所にとどまる腫瘍を指します。さらに腫瘍はその起源となる細胞により上皮性(体表や、消化管など外界に開く管の内面を覆うものを上皮といいます)と、それ以外の非上皮性に分けられ、上皮性の悪性腫瘍の代表ががんであり、非上皮性のものには肉腫やGISTが含まれます。

胃や大腸の上皮(粘膜)から発生する腫瘍では、悪性(癌)と良性(ポリープや腺腫など)の区別が病理検査(顕微鏡で細胞・組織を観察する検査)の所見によって基準がはっきりしています。GISTは基本的には悪性腫瘍ですが、その病理所見だけでは悪性度(転移や再発の起こしやすさ)の評価が困難です。GISTの悪性度は再発の危険(リスク)が高いか低いかで分類され、再発の危険が高いものは腫瘍径が大きい場合や細胞分裂の数が多い(=増殖が盛ん)場合とされています。GISTと診断されれば、手術で完全に病変が切除された後も、がんの術後と同様に再発の監視のために定期的な経過観察が必要で、再発のリスクが高い場合は手術後に抗がん剤による治療が必要となる場合もあります。

3.GISTは粘膜下腫瘍として発見される
ここからGISTの発生臓器としては最も頻度の高い、胃のGISTを例に説明します。

GISTは粘膜より下の間質から発生するため、胃のバリウム検査や内視鏡検査などでは表面が正常の粘膜に覆われた腫瘍(粘膜下腫瘍)として発見されます(図2)。