稲川淳二 独占告白「私が愛する息子に死んでほしいと願った日々」
https://gendai.media/articles/-/33189?page=2 (障害者として生まれてきた次男を愛することができなかった稲川淳二。次男の手術の日が刻一刻と迫ってきて…)
手術日が近づいてくると、
「手術中に死んでくれたらいいな」
と思うようになった。雪の降る中、ロケに行ったとき、今もしあいつがこの雪の中に落っこちたら死んじゃうんだろうな、ずっと泣き声が聞こえるのかな、楽に死ねる方法ないかなと考えてしまうんですよ。
普通、手術するっていったら助かることを願うんだけど、私は反対だった。死んでくれたほうがいいのかもしれない、とどっかで思っていたんです。
手術する前、病室で自分の子供を見たときに、殺そうと思ったんですよ。こいつはとっても欲しくて生まれた子供だけど、こういう病気で生まれちゃったから、結構苦労するだろうなと。もしも私が先に逝って、こいつが生き残ったとき、誰が面倒を見てくれるんだろう。女房も長男も大変だろうな。みんなに邪魔者扱いされてしまうのかな。他人がこの子の面倒を見てくれるのかなと段々不安になってきて、初めからいなかったことにしたらいいと思いついた。じゃあ今、私がこいつの鼻をつまんで窒息させればいい・・・・・・。
周りを見たら、病室には誰もいない。私ね、スーッと手を伸ばしたんですよ。鼻まであとわずか1cmのところまで手が伸びたんだけど、ブルブルブルブル震えてできないんです。そのうち、「やめておけよ」っていう声が聞こえたような気がして、ふーっと手をどかしたら、女房が部屋に入ってきたんですね。
それでも手術で死ぬかもしれないと、まだいやらしいことを考えてるんです。手術は朝の8時から夜の8時までかかりました。手術を終えて、エレベーターから次男が出てきた。ベッドの周りは檻のような柵がついてて、医療器具なんかがぶらさがってる。次男は頭にぐるぐる包帯を巻かれて、体には何本も管が刺さってました。こいつが、ハァハァと息をしてるんですよ。小さな体で、一生懸命に病気と闘ってるんです。それを見て、「私はなんて奴だ」と思ってね。私はもう最低だと思ったんですよね。
長男がいてとても幸せだったから、もう一人いたら、もっと幸せになると考えてつくった。ところがそれは失敗だったと思った。自分の都合でこいつを殺そうと思った。考えてみたら、子供に罪はないし、こいつの名前を一度も呼んでない。何度も次男の名前を叫んで言いました。
「俺はお前の父ちゃんだぞっ」
てね。