焦点:西アフリカのカカオ大国「終わりの始まり」か、生産が壊滅的落ち込み

3月28日、彼女のカカオ農園は有毒物質で汚染され、赤茶色に染まった水たまりが点在していた。写真はカカオの実。ガーナ・オシノの農場で2月撮影

[サムレボイ(ガーナ) 28日 ロイター] - 彼女のカカオ農園は有毒物質で汚染され、赤茶色に染まった水たまりが点在していた。
違法な金採掘業者が残したものだ。農園の所有者ジャネット・ジャムフィさん(52)は、この荒れ果てた風景に心が折れかけている。

ガーナ西部にあるこの27ヘクタールの農地には、昨年まで6000本近いカカオの木が植えられていたが、残っているのは12本に満たない。

「この農園は私が生きていくための唯一の手段だった」と涙するジャムフィさんは離婚し、4人の子どもを抱えている。
「この農園は子どもたちに残すつもりだったのに」

西アフリカのガーナと隣国コートジボワールは長い間カカオの供給量が世界全体の60%超を占める「カカオ大国」だった。
しかし今シーズンは収穫量が壊滅的に落ち込んでいる。チョコレート原料のカカオ豆は供給不足に陥る見通しで、
ニューヨーク市場のカカオ先物は年初から価格が2倍以上に跳ね上がった。相場は連日のように史上最高値を更新しており、上昇基調に変化の兆しは見られない。

ロイターが農家、専門家、業界関係者など20人余りに取材したところ、ガーナのカカオ生産の落ち込みは違法な金採掘の横行、
気候変動、業界の運営ミス、カカオを枯らす病気の急速な蔓延など、さまざまな要因が重なったことが分かってきた。

ロイターが独占入手した2018年以降のデータによると、ガーナの政府機関「ココア委員会(COCOBOD)」は最悪の場合
59万ヘクタールの農園が、最終的にカカオを枯死させる「カカオ膨梢ウイルス」に感染していると推定している。

ガーナのカカオ栽培地は現在約138万ヘクタールだが、COCOBODによるとこの数字には、
まだ収穫はあるが既にカカオ膨梢ウイルスに感染した木も含まれる。

トロピカル・リサーチ・サービスのカカオ専門家、スティーブ・ウォータリッジ氏は「生産は長期的な減少傾向にある」とした上で、
「臨界点に達しなければ、収穫量がガーナで20年ぶり、コートジボワールで8年ぶりの水準にまで落ち込むことはなかった」と述べた。

専門家は、ガーナの収穫量急減は簡単には解決不可能な問題で、市場に衝撃を与えており、
西アフリカ諸国がカカオ市場を牛耳っていた時代の「終わりの始まり」になるかもしれないと指摘する。

カカオ不足の影響は既にチョコレート市場に出始めている。調査会社ニールセンIQのデータによると、
米国ではイースター(感謝祭)用に売られているチョコレートの店頭価格が1年前より10%以上高くなっている。

チョコレートメーカーは仕入れの数カ月前にカカオ価格をヘッジすることが多いため、
西アフリカ諸国の収穫量激減が実際に消費者を直撃するのは今年後半だとアナリストは見ている。

ある専門家は「チョコレートバーは贅沢品になるだろう。手に入っても価格は2倍になる」と急激な値上がりを予想した。
https://news.goo.ne.jp/article/reuters/business/reuters-20240330004.html