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元南極隊員が編み出した宇宙食の「とろろ」 笑顔と集中力発揮願う

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「宇宙日本食」に、十勝地方の名産品「十勝川西(かわにし)長いも」を使った5品のメニューが認証された。閉ざされた環境で長期生活する宇宙飛行士に、長芋を食べて元気になってもらおうと、産地の帯広市川西農協(有塚利宣組合長)が発案。元南極観測隊員の経歴を持ち、フリーズドライ食品会社「極食」(札幌市)社長でもある阿部幹雄さん(70)が、開発に成功した。

 認証されたのは「とろろ」「トマト煮込み」「グラタン」「オムレツ」「肉巻き」の5品。いずれも長芋入りのフリーズドライ食品で、とろろだけが粉末状。パック詰めされた食品を、水やお湯を入れて戻す。数分後には食べられるようになる。

 地元のブランド牛肉の「豊西牛」や大正金時など帯広の食材のほか、よつ葉乳業の牛乳、清水町の卵、猿払村のホタテなど道内の産品をふんだんに使った。

 2017年に同農協から「とろろを宇宙食にしてください」と開発の打診を受けた阿部さんだが、当初は難しさから断り続けたという。しかし、阿部さん自身、07年11月〜10年3月に南極観測隊の調査で、極地で計3度、延べ9カ月にわたる過酷なテント生活を送った経験があり、食事の大切さも身にしみていた。南極から帰国後、知見を生かしフリーズドライ食品の開発などを行う「極食」を立ち上げていた。