「トイレにも行けない…」増える高齢患者を汗だくで介助 「5類」移行1年でも「ゼロコロナ続けなければ・・・」 対策緩められない地方病院の現実

4月から通常の医療体制移行も、負担は増える一方

 新型コロナウイルス感染症への国の対応が、4月からインフルエンザなどと同様の通常医療体制に移行する中で、長野県の中野飯山地域(北信医療圏)で数少ない中核病院の県厚生連北信総合病院(中野市)では負担感が高まっている。(松崎林太郎)

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5類引き下げ以降、患者への対応長期化

 3月中旬、新型コロナ感染をきっかけに誤嚥(ごえん)性肺炎を発症した高齢の男性入院患者のベッドを、看護師2人が囲んだ。ゴホ、ゴホ、ゴホ…。たんが混じったせきを繰り返す男性の近くで汗だくになって介助する2人は、防護服に医療用のN95マスク、2重のゴム手袋とキャップ、ゴーグルの完全装備で対応した。

 「病室に一度入ったら、水も飲まず、トイレにも行けないまま、半日は出られなくなる」。川野実智枝・看護師長は、昨年5月に新型コロナの感染症法上の位置付けが「5類」に引き下げられて以降、入院患者の対応に割く時間が増えている―とする。

目立つ1人暮らしの高齢患者

 5類移行後は入院患者の傾向が変わった。新型コロナによる重症患者や50代以下の入院患者がいなくなった一方、1人暮らしの高齢者が目立つように。5類移行で社会的な感染対策が緩和されたためか、高齢者が感染リスクにさらされ、感染によって持病が深刻化する場合も多い。毎月30〜40人程度の入院患者を受け入れ続ける病室には、肺炎などの合併症を患って自宅で倒れるまで悪化させた高齢者が運び込まれることがある。

 認知症の患者も多く、身体を拭き、食事や排せつなどの介助に手間がかかり、川野看護師長は「5類移行前より看護師の負担はむしろ増えている」と話す。体調の回復に時間を要し、たとえ回復しても身体機能が衰えて1人暮らしの自宅に帰すことはできず、入院が10日以上に長期化することも珍しくない。

後方支援の病院や老人保健施設も不十分な環境

 背景にあるのは北信総合病院が置かれた環境だ。地域に1人暮らしの高齢者が多いことに加え、北信医療圏の中核病院は、飯山市の飯山赤十字病院と合わせて二つ。後方支援の病院が少なく、高齢者を受け入れる老人保健施設なども十分な数がないため、軽度から重症までの患者を幅広く受け入れなければならない。回復期などの患者も診る必要がある。5類移行後も感染拡大期は病床が逼迫(ひっぱく)し、昨年4月から今年1月までに病床稼働率100%超の日は73日に上った。

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