「親が学費負担放棄」学生を絶望させる新たな貧困

 今、大学や専門学校で勉強をする若者たちは本当に厳しいことになっている。とくに自宅外通学の大学生の貧困状態が深刻だ。

 数十人におよぶコロナ禍の大学生への取材で浮かび上がった主な理由は、学費の高騰、親世帯の収入減、出席の厳格化、アルバイトの報酬減、消費増税、親の学費負担放棄、コロナの影響でバイトができない、など。

 その中でも驚いたのは、親が学費負担を放棄しているという学生が何人もいたことだ。

(中略)

大学受験直前に父親が大企業をリストラされた見城達也さん(仮名、22)のケースを見ていこう。達也さんは東京の有名私立大学4年生。高校3年のときに父親のリストラがあり、そこから家庭の状況が変わったという。

 「一人息子だったので、親は貯金を切り崩して学費を払ってくれていました。でもコロナになって、大学学費はとても捻出できない、限界だって。不可能だってことに。まして、大学院進学なんてとんでもないって。じゃあ、僕が働くってなって朝から晩までバイトです。そうしたら勉強が追いつかなくなった。就職するにしろ、進学するにしろ、宙ぶらりんです」

 「元々、僕は一橋大学、できれば東京大学を目指していました。合格率は五分五分でした。ダメだったら浪人するつもりでした。でも、受験直前に父親のリストラが決まって、とにかくどこでもいいから現役で入学してくれって。学費は親に払ってもらって。3年生までは日本学生支援機構の第一種奨学金と、塾講師のバイトで7万円くらい稼いで、なんとかなっていました。ただ、もう学費も払えないって」

(中略)

達也さんは今、アルバイト漬けであり、眠る時間もないほどのスケジュールをこなす。「キツイし、ツラいです。愚痴になるけど、本当にキツイ。でも、やるしかないのでやっています」と、涙目になりながら語った。

*  *  *

 親が学費や奨学金を奪ってしまうケースもある。坂井麗奈さん(仮名、24歳)は短大卒、社会人4年目。奨学金返済という名目で、短大2年のときから毎月給与の6割程度(10万円〜13万円)を母親に請求されて渡している。母親にはヒステリーがあり、怖いという。その大きな金額に疑問を抱いても、麗奈さんは何も言わないで従っていた。

 「お金のことは詳しくはわからないけど、母は奨学金をフルで借りたみたい。私が高校3年のとき、母は奨学金の制度を知って急に態度が変わった。ずっと進学なんて無駄遣いって反対されたけど、急に進学しなさいみたいな感じになりました。

 それからヨイショヨイショ、行け行けみたいな。(中略)

 「在学中、母親から奨学金の返済があるから毎月10万円が必要だって言われました。そんな金額は無理なので、もういろんな仕事をしました。奨学金のことも学費のこともよくわからないので、母親の言われるままにやるしかないです。授業料の支払いとか、奨学金の返済は全部母親がやっているので」

 奨学金の返済は卒業後なので、返済で必要というのはウソのはずだ。だが、麗奈さんはダブルワーク、トリプルワークして働き詰めになった。バイトばかりしていたために、就職できず、今はサービス業の非正規雇用で低賃金労働をしている。

(中略)

彼女自身は奨学金の仕組みは何も知らないようで、母親に言われたまま書類に署名捺印して進学している。在学中から母親に支払っている返済のお金と、必要以上に借りた差額は母親が着服、もしくは家計に組み込まれている可能性が高いように感じた。

(中略)

 すでに3年以上、毎月10〜13万円を母親に渡しているということは、少なく見積もっても現段階で360万円以上を払っているので、学費分の返済は終わっているはずだ。しかし、まだ毎月の返済を求められていた。麗奈さんはウンザリしながら「そういえば、短大進学からお母さんの生活が少し派手になったかも……」と言っていた。

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