――西野さんはご自身の夢として世界に挑んできたわけですが、エンターテインメント産業を育成した韓国に水をあけられていきました。西野さんは、いまの日本のエンタメ業界をどのように見ていますか?

【西野】あんまり元気じゃないのは間違いないですよね。

その原因を考えてみると、クオリティに問題があるというよりも、「日本人のリテラシーが絶望的に低い」というのはあると思っています。お客さんだけでなく、クリエイターも含めてです。リテラシーが低い、いまの日本の土壌では、おもしろいものはつくれないんだろうなと思っています。

たとえば、来年1月に上演する「プペル〜天明の護美人間」で3万円のSS席というのをつくったんです。かぶりつきで見られる特等席を3万円で売ると、売り上げが確保できて、3000円の席をつくることができて、歌舞伎のハードルをグッと下げることができます。それに対して、どこかの頭の悪いメディアが「プペル歌舞伎は高い!」というニュースを出していました。
ミスリードでアクセス数を稼ぐメディアの品の悪さは今に始まった話ではありませんが、お金リテラシーの低い人が、その記事を鵜呑みにしてしまい
「プペル歌舞伎は高い!」という批判を起こしてしまう。

これだけではありませんが、日本人のリテラシーの低さから、日本のエンタメは海外勢にマウントを取られてしまっている。韓国のアイドルグループがミュージックビデオをつくるときに、ダンスのクオリティだとしたら、韓国側に軍配があがってしまうので。

日本なりの予算の作り方を考えないといけない

【西野】国がエンタメを支援してくれないのは、昨日、今日、始まった話ではなくて、何十年も続いている話です。もともとわかっていることなのだから、手を打たなければいけない。日本なりの予算作りの議論をしていかないといけないと思います。

【西野】批判する人は感情で反応してしまっているので、理屈は完全に破綻しています。理詰めしていくと確実にゲロを吐くと思います(笑)。

日本人が新しいことや知らないものを叩いてしまうっていうのはすごくあって。いつもなぜなんだろうと考えるのですが、
島国の性格もあるかもしれません。大陸はウエルカムじゃないですか。「なるほど」と受け入れるところから始まって、咀嚼してから是非ぜひを決める。

――日本人の国民性によってエンタメ業界が苦しくなっていっているということですか?

【西野】それは間違いなくあると思います。

僕は2013年にクラウドファンディングでニューヨークの個展の開催費用を集めていたし、2016年から制作過程を売るオンラインサロンを始めていました。だけど、そのたびに「ネット乞食だ」「詐欺だ」「宗教だ」と言われて炎上していたので、
それを見ていたクリエイターさんはなかなか後に続けないですよね。自分は無視できるタイプだから平気ですけど。

舞台役者はバイトしないと食べられない日本
――才能が殺されているというお話でしたが、いま、クリエイターさんが食べていくのは厳しいのでしょうか。

【西野】食べていけるのは、ごく一部の人だけですね。

たとえば、舞台役者さんは稽古を1カ月くらいするのですが、その間に稽古代は基本的に支払われない。無収入なんです。それが当たり前になっているけど、僕は反対です。

挑戦を叩くのをやめないと手遅れになる

もうそろそろやめないと、本当に日本の才能が死んでいってしまう。

ちなみに、これは「僕を叩かないでね」という話ではないですよ。僕はメディアやアンチに叩かれることで競合が減っているので、得をしている人間です。だけど、日本全体を見渡したら、マイナスになるから、もういい加減やめようよと。それは本当に思いますね。

https://president.jp/articles/-/52486?page=2