2018年のクリスマスが近づいたある日の14時ごろ、花柄の服を着た女性が3歳くらいの娘と一緒に店を訪れ、バインセオを注文した。
チュオンさんの記憶では、女の子は痩せて髪は長く、顔は汚れていた。

 店が混んでいたため、その親子にバインセオを出した後、夫妻は2人を気に留めることなくバインセオを焼いていた。そういえば会計が
まだだった、と気づいたチュオンさんが親子のほうに目をやると、母親の姿はなく、女の子だけがテーブルの上で眠っていた。店がまだ
混んでいたこともあり、夫妻は「母親は用事でちょっとどこかに行っただけで、すぐに戻って来るだろう」と考え、仕事を続けた。

 しかし、その日の仕事が終わって片付けをしていたルオンさんは、女の子がまだテーブルの上にいることに気づいた。「私を見ると『眠いよ』と言って、
またテーブルの上に横になったんです。『お母さんはどこに行ったの?』と聞いても、ただ首を横に振るだけでした」とルオンさん。

 ルオンさんは仕方なく女の子を抱っこして自宅に連れて帰り、風呂に入れてから休ませた。一方のチュオンさんは町内会長の家に行き、
女の子のことを報告した。町内会は、チュオンさん夫妻が一時的に女の子を保護し、母親が迎えに来るまで世話をすることに同意した。
しかし、5年が経った今も母親は戻っていない。
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